畜産技術情報 高受胎率が得られる豚の定時1回人工授精


 高受胎率が得られる豚の定時1回人工授精
農業総合試験場畜産研究部養豚研究室


 豚の発情期間は概ね48〜72時間と個体差が大きく、排卵は発情期間にかかわらず、期間の70%が経過した頃に起こるため、個体毎の排卵時間の把握が困難です。豚の人工授精(AI)適期は排卵の約24時間前であり、通常は、適期を逃さないように、期間中2回以上のAIを実施しています。もし、排卵時間を正確に予測できれば、1回のAIで高い受胎率を得ることができます。
 愛知県農業総合試験場では、3種類のホルモン剤を使用して排卵時間を人為的にコントロールし、1回だけのAIで高い受胎率を獲得できる技術を開発したので紹介します。

■ホルモン剤の投与プログラム
使用するホルモン剤はプロスタグランジンF2α(PGF2α)、ウマ絨毛性性腺刺激ホルモン(eCG)およびヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)です。プログラムでは、@PF2α(ジノプロストの場合15mg)を発情終了日から12日目に6〜12時間間隔で2回投与、AeCG(1000単位)を13日目に投与、BhCG(500単位)を16日目に投与することで、ほとんどの場合、排卵はBから約45時間後に起きます。

■定時1回AIによる繁殖成績
hCG投与から24または36時間後に1回AIした場合の繁殖成績は、分娩率85%以上、生存産子数11頭以上で、通常の方法でAIした場合と同等以上の成績でした(表1)。また、この場合、すべての母豚から受精卵が回収できました。しかし、hCG投与から 12または48時間後に1回AIした場合では、受精卵が回収できた母豚の割合及び受精卵数は低下しました。従って、AI適期はhCG投与から24〜36時間後であり、この間に1回AIを実施すれば、通常法と同等の繁殖成績が得られます。



■本技術のメリット
 本技術は、ホルモン剤投与が必要ですが、AI適期を人為的にコントロールできるため作業計画が立てやすく、AIも1回でよいため、手間を大幅に削減できます。

詳しくは愛知県農業総合試験場ホームページの「農業の新技術No.103」をご覧ください。
http://www.pref.aichi.jp/nososi/seika/singijutu/singijiyutu103.pdf